この本は、佐藤雅彦さんの面白くて鋭い考察集です。
佐藤さんは、たくさんのCMや「だんご3兄弟」「ピタゴラスイッチ」なども出されたメディアクリエーター。
雑誌「暮しの手帖」に2007年7月1日から2011年5月まで連載した「考えの整とん」に多少の筆を加えた本です。
その中の一編「敵か味方か」。佐藤雅彦さんがある女性と出会ったエピソードからの考察です。
人間というか生物にとって、山奥や戦場で突然出くわした見知らぬもののどんな情報を一番得たいか。それは、簡単である。真っ先に得たいのは、相手の所属でもないし、正確な名前でもない。ひとつだけ知りたいとしたら、ただ、その相手が「敵か味方か」である。例えば、山でいきなり生き物が目の前に現れたとする、その時、我々は、その動物の名前がツキノワグマかアオダイショウか、哺乳類か爬虫類か、なんてどうでもいい、とにかく、敵か、そうでないかを見極めたいのである。
私たちは、野生から一番遠くの文明社会に住んでいるように見える。しかし、私たちの内にある、生存のためのプログラムは、思わぬ野生を含んでいて、しかもそれが立派に機能し、現実というジャングルを無事すごすことを可能にしてくれている。(P021と023より抜粋)
私は、佐藤雅彦さんの日々の中で気付き。それをやさしく書かれてある文章に、なるほど!!と頷いています。
本の27編のエピソードも、それを考察する文章もス〜と読めて面白い!!